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耳はちぎれてしまうのではと思うぐらいの耳切れで、みんなに振り返って見られた。 Nさんは、そんな子どもをもっていることがイヤだったし、自分が産んだと認めたくなかった。
だから一日も早く治そうと必死になり、どんどん自分を追いつめていった。 肌をきれいにすることだけしか考えられなかったとき、発想の転換をさせてくれたのは、Yの生産物を売りにきているおじさんだった。

「アトピーで除去食をしていることを話したら、『食べ物も大事やけど、心も大切ちゃうか』と言ってくれて、その言葉が心に残ったのね。 それで、Yのアトピー講座に思いきって参加したんです。
そこでは子どもが育つ環境について話していたんですが、アトピー講座なのになんで、と思ってました。 でも、『子どもの皮膚を見て、子どもの心が見えますか?』と問いかけられたときは、ハッとしたんです。
そんなの、考えたことがなかったんですから」そして、ゲージ飼いのニワトリは、放し飼いにしても恐がってエサのあるところまで行けないという話に、子どもの姿が重なった。 三歳になっているのに好奇心が乏しい。
口癖は「できないかもしれないから、やらない」みんなと同じものが食べられないから、ほしくても素直に言えない。 友だちといっしょに紙芝居を見たとき、他の子は前に行っても、TくんはNさんから離れなかった。
このままではいけない。 一歩踏み出さなければ。
そう思ったNさんは、アトピーの子どもをもっているお母さんにTくんを預け、Yの特講に参加した。 「いくつかのテーマについてディスカッションしたんだけど、いままでの自分の生き方を振り返ることができました。
私はいつも心配と不安だけを抱えて、後ろばかり向いて生きてきた。 子どもをかばって、かばって、育ててきた。
でも、これからは前を向いて生きていこう、一生アトピーでもいい、と思えるようになったんです。 だってね、もし、アトピーじゃなくても、これからの長い人生、何があるかわからないでしょ。

交通事故で片腕なくしたりすることもあるんだから」Nさんが自分を冷静に見つめ直している間に、Tくんにも大きな変化が起こった。 卵、牛乳、小麦は完全に除去していたのに、アイスクリームを食べてもなんともなかった、と肌をツルっとさせて帰ってきたのだ。
Nさんは、ひょっとすれば何を食べても大丈夫なのかもしれない、と思うが、まだ自分では恐くて与えられなかった。

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